知らなかった世界へのキッカケ
吉城園を出た私、これから向かう先はどんなところかちょっと想像がつきません。分からないのに、相変わらずの下調べ無しです(笑)。
そこは『入江泰吉記念奈良市写真美術館(いりえたいきちきねん ならししゃしんびじゅつかん)』(この記事を書くに当たって、初めてちゃんとした名称を調べました!)という、昨年時間切れで断念したところです。
美術館や写真展には、これまで殆ど行ったことがありません。いつもなら行き先として選択することが無い私のような者には、『関西文化の日』は丁度良い機会です。ここも通常大人500円のところを無料で入れます。
近鉄奈良駅前でもらった地図と、あちらこちらに設置されている案内板を頼りに行きます。(黄色)近鉄奈良駅→(黄緑色)奈良国立博物館→(紫色)吉城園と回り、これから向かうは(水色)のところです。
私はどちらかと言うと地図は読める方だと思っていたのですが、ここ奈良の中心部では以前も『ならまち』で方向を見失ったりと、なかなか上手くいきません。
今回も『ここ曲がればいいんじゃない?』と思って行った道が、全然良くなくて引き返すことになってしまったり…
結局一番避けたかった春日山原始林を抜けることとなってしまいました。誰かと一緒だったらいいのですが、まるで山道のようなので、1人で歩くのはちょっと怖いです。
この写真ではそんなに暗くは見えませんが、実際はもっと薄暗いし人の気配もありません。 たま〜に人とすれ違うのですが、お互いに『ギョッ』としてしまいます。ごめんよ~ 驚かせて。
Googleさんのお導きの通りに進んで行きます。林の中でも使えて良かった。 住宅地に入ってホッとしました。同じようにスマホを見ながらウロウロしている方々を見かけます。皆さんはどこに行くのかな?
で、予想より遅くの到着。雨で薄暗い写真ですが…
ずーっと『入江さんの写真館』と思っていたので、ここに来て『奈良市』と大きく書かれていることに気付いてビックリです。勝手に『入江泰吉財団』的なところが運営母体だと思っていました(笑)。まさか市の施設に個人名が冠されているとは思いもしませんでした。
そもそも入江泰吉さんとは? 調べてみました(いつになったら、行く前に調べるん?)。
1905年のお生まれ。東大寺の旧境内地で育ち、お兄様からカメラを譲られたことで写真に興味を持ったそうです。
大阪で写真店を営むも、1945年の大阪大空襲で自宅兼店舗が全焼。その後奈良へと戻られました。
戦後、奈良の仏像がアメリカに接収されるという噂を聞き、写真に残そうと撮影を始められたとのこと。その噂は結局デマだったのですが、その後も奈良の仏像や風景、花や伝統行事等を撮り続けたそうです。
入江泰吉さんは生前、約8万点に及ぶ全作品を奈良市に寄贈され、1992年1月に逝去。
その年4月に西日本初の写真専門美術館である『奈良市写真美術館』(2007年に『入江泰吉記念奈良市写真美術館』と改称)が奈良市高畑町に開館。それがこの建物です。
Googleマップで到着したことは分かるのに、想像していたような建物がなく、アレ?どこ?と思いました。まさか瓦屋根だったとは(だ・か・ら、事前に調べなさい)。
この奈良の風景に見事に溶け込んでいます。中に大仏様が座っておられても違和感ないかもです(笑)。そして屋根の下はいかにも美術館という感じの佇まい。とても素敵な建物です。
このような雰囲気の建物、最近どこかで見たような… あっ、10月に行った新神戸駅近くの『竹中大工道具館』が、同じように屋根が和風で屋根から下は洋風でした。こういう建物、好きかも。
実は先程Googleで調べていたとき、通常より混んでいる旨の表示がありました。でも、中に入っても閑散としています。何故?
その理由がすぐに分かりました。 本日只今、写真家の中西敏貴さんご本人によるギャラリーツアーが行われているそうで、皆さんそちらに行かれているようです。
頂いたチラシの両面↓
ツアーのことも書いてあります。常連らしき方々が、『満車になんかなったことないのにビックリした。四国ナンバーまであった』と話されていました。
1階には学生のコンクール写真が展示されています。中学生くらいから撮り始めるんですねぇ。カフェテリアもあります。そして超有難い、後からお金が戻るタイプのロッカーもあり、利用させて頂きました。
入江泰吉さん初め、中西敏貴さん、そして入口に案内のあった三笠フォトクラブの方々の展示は地下にあります。
地下へと行ってみましょう。
ギャラリーツアー中ということで、入江泰吉さんの写真が展示されているコーナーには数名しかおられません。お陰でゆっくりと見させてもらうことが出来ました。
奈良の明日香村、山の辺の道、吉野辺りの風景が飾られています。知っているはずの場所なのに、入江さんの写真では全く違った景色に見えます。どんな一瞬を捉えたらこのような姿が見られるのかな。
ゆっくり見ていたんですが、ツアーに追い付いてしまいました。60~70名ほど参加されているようです。 聞こえてくる声をなんとなく聞きながら展示を見ていましたが、やはりなかなか前には進めません。
また入江泰吉さんのコーナーに戻り、『どこにピントが合っているのかな?』と1枚1枚ピント探しを始めちゃいました。そのピントが、多分端っこの『ここだ!』だったり、とうとう見つけられなかったり。なかなか難しかったです。
三笠フォトクラブの展示コーナーにもお邪魔しました。目録も頂いたりして。恐縮です。
実は昨年の『関西文化の日』に、入江泰吉さんの旧居を訪れていたんです。吉城園からもう少し北に行った赤色のところです。
ここは入江泰吉さんが戦後から亡くなるまで暮らした場所です。泰吉さんが亡くなられてから8年後の2000年に、奥様が奈良市に寄贈されたとのこと。奈良を心から愛したご夫婦だったんでしょうね。
そのとき撮った写真をこちらにおまけで載せちゃいます。ブログを始めるなんて全く思ってもいなかった頃だったので、使えそうな写真はほんの少ししか有りませんでしたけど。
1階のお部屋ではソファに座って写真集を見ることもできます。
部屋の電話は、スタッフの方によると泰吉さんが台所にいる奥様に『お茶』と電話をされたりするための内線用だったそうです。1階の写真が全然無いので、様子をお見せ出来なくて残念です。
2階の写真は少し撮ってありました。部屋から見える景色がすごく綺麗です。
ここ、2階ですけど縁側みたいになっているでしょ?
スタッフの方に『あそこに座れるんですか?』て質問したら、『崩れ落ちちゃいますよ』と言われたことを覚えています。
確かに、縁側じゃなくて、大きくせり出した屋根でした(笑)。でもあそこに座れたら気持ちいいだろうなぁとその時思いました。
すぐ側に色づいた木々がいい感じに見えていたので、『お隣りは何ですか?』とスタッフの方にお聞きすると、『東大寺です』と。それって、東大寺をたまたま借景? スゴッ!
庭に出て見上げて撮った写真。確かに縁側ではなくて屋根です(笑)。
庭には暗室もありました。
中の様子↓
もう少しちゃんと見てくれば良かったな。 また行こうっと。通常は大人200円で入ることが出来ます(この日は無料でした)。
中西敏貴さんのギャラリーツアーが終わったみたいです。人がばらけたので、私も残りの写真を見せて頂きました。
北海道で撮影された写真です。モノクロもたくさんあります。展示が横一列ではなくて、壁の上の方だったり、下の方だったりしています。撮ったときの目線に合わせた配置だそうです。
一周して戻ってくると、ショップの前では中西敏貴さんのサイン会が行われていました。
私はその近くに置かれた椅子に腰掛け、敷地内に入り込んだ鹿を、ガラス越しにボーッと見ながらひと休み。
この美術館には、入江泰吉さん以外にもたくさんの写真集や書籍が集められた閲覧室があります。図書館みたいにラベルが貼ってありましたよ。
これまでは、こういう施設とは疎遠でしたけど、いつもとは違うアタマを使ったような気がしました。新しいことと接するのも、なかなか良いですね。
夕方近くになりました。もう1箇所行きたいところがあるので、暗くなる前にそちらに向かいましょう。